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個人クリニックを医療法人化するメリット・デメリット

個人クリニックを医療法人化するメリット・デメリット

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個人医院やクリニックを個人事業から法人成りした場合、社会的信用が高くなったり、節税ができたりとさまざまなメリットがありますが、事務手続きの煩雑化などデメリットもあります。
具体的にどのようなメリット、デメリットなのか確認していきましょう。

 

個人クリニックが医療法人成りするメリット

現在医療法人を設立する場合、基金拠出型の社団医療法人となる事がほとんどです。
基金拠出型医療法人の場合、次のようなメリットがあります。

  • ● 相続税対策になる
  • ● 節税対策になる
  • ● 社会的信用力の向上

それぞれ確認していきましょう。

 

相続税対策になる

基金拠出型医療法人は基金の拠出者に対し、拠出した金額もしくは、拠出した金額に相当する時価の資産によって返還する義務があります。
旧医療法の持分ありの医療法人(※)の事業承継では、出資金を引き継ぐときに、多額の相続税が発生するケースがあります。
一方で基金拠出型医療法人の場合、事業承継時に多額の相続税がかかるという事態になりにくいです。
そのため後継者が確定している、もしくは目途がついている場合には大きなメリットになるといって良いでしょう。
※平成19年医療法改正前に設立した医療法人の事。

 

節税対策になる

医療法人化メリットとして節税対策になる事があります。さまざま

■所得税から法人税になる事によって税率が低くなる
医療法人化のメリットとして納める税金の税率を低くできるという点です。
個人事業主の場合、所得税を納める必要がありますが、その税率は超過累進税制で最高45%にもなります。
一方で、現段階での法人税は約20%と一義的な税負担を大きく減らす事ができます。
ただし、法人に一旦留保した利益を個人(代表者や後継者)に移転する場合、課税機会が2回となり税負担が増える可能性もあります。
そのため留保した利益は臨時の事業経費もしくは退職金で費消する事が望ましいと言えます。

■個人事業主では経費にならないものを経費にできる
医療法人化のメリットとして、個人事業主の場合には経費として認められないものが法人になる事によって経費にできるものがある点です。
例えば、個人事業主の場合、生命保険等は経費になりませんが、法人の場合経費にできるという事があります。

■消費税の免税事業者になる事が可能になる
医療法人化のメリットとして消費税の免税事業者になれる可能性がある点です。
基金拠出型医療法人の場合、基金は資本金等に該当しません。
そのため、資本金1,000万円未満の事業者として設立2年間消費税の免税事業者となる事が可能となる場合があります。
なお、2年目については特定期間等の判定により課税事業者となる事があります。
またインボイス制度によって営業上、課税事業者を選択する必要がある場合もあります。

 

社会的信用力の向上

医療法人になるには施設が所在する都道府県の認可が必要です。
審査には財産にかかわる審査も含まれるため、信用が増し銀行からの融資が受けやすくなります。

 

医療法人化のデメリット

医療法人化のデメリットには次のようなものがあります。

  • ● 情報開示する必要がある
  • ● 個人との取引の区分の明確化する必要がある
  • ● 残余財産の帰属

 

情報開示する必要がある

医療法人に関しては、国民の健康に資し、公益性の高い組織を考えられる事から財務の透明化のために、毎事業年度事業報告を提出する必要があります。
提出した事業報告は一般の閲覧が可能になるため、財務・損益の状況がオープンになります。自院の財務・損益状況の開示を望まれない場合にはデメリットになるといえます。

 

個人との取引の区分の明確化する必要がある

個人事業の場合には事業主勘定によって、事業に無関係な収入・支出を処理する事ができます。
しかし法人組織となった場合には明確に区分する必要があるため、常日頃個人支出が混在しているような場合には区分処理が煩雑化します。
場合によっては役員貸付等になる事があります。
役員貸付等について、税務上は役員貸付として利息の計上や返済を行っていれば問題ありません。
しかし一方で医療法人を監督する都道府県もしくは政令指定都市の指導としては、特定役員に対する金銭の貸付等を原則的に認めていないので注意する必要があります。

 

残余財産の帰属

基金型拠出型医療法人についてはモデル定款で残余財産の処分を国・地方公共団体等に寄付する事とされています。
そのため後継者がおらず、閉院する事となる場合には、残余財産の処理を慎重に行う必要があります。

 

医療法人の設立を検討した場合は鵜澤税理士事務所にご相談ください

今回は個人クリニックが医療法人化するメリットとデメリットについて解説していきました。
医療法人化する事はさまざまなメリットがある一方で、設立後の会計が複雑だったりという難しい点もあります。
鵜澤税理士事務所では医療法人の設立のサポートはもちろん、設立後の会芸業務や経営アドバイスなども行っています。
医療法法人化を検討している方はぜひご連絡ください。